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某所で新月予報を出している「星見当番」の裏日記。裏当番&裏テントチームが執筆を担当


by ura_hoshimi

歌うウイルス

【裏当番・記す】

宿主が風邪をこじらせ、表当番はおろか裏チームのメンバー全員が揃って寝込んでいる。全員でひとつの体を共有しているのだから当たり前と言えば当たり前の話。

唯一しぶといのは歌当番で、頭の中でとぎれとぎれに歌い続けている。宿主の喉が風邪でつぶれても、歌当番は物理的な喉を持たないからな(笑)。脳さえしっかり機能していれば歌唱に問題なしというところが凄いとこである。

かくして病める星見当番の枕辺に、今日も歌当番の歌が響き渡る。

国敗れて唱歌あり 城春にして草木深し(笑)

しかしどうだ、熱のせいで宿主のオツムが壊れ気味になってきた。おかげで歌当番の歌もだんだんおかしくなってきたぞ。断片化しているし…内容は支離滅裂だし…それでも美声を(?)保ってるところが恐ろしいというものだ。物理的な喉を持たないというのはやっぱり強みなのだな。

…風邪をこじらせているはずなのに何故早寝をしない?ごもっともである。しかし仕事を休んで昼間の9時から夜18時まで眠り続けたせいで目が冴えて眠れないのである(爆)。しかたないので歌当番に日記を続けてもらうことにする。


【歌当番のファントム談義・裏テント篇】

久々登場の歌当番。他の当番に倣ってプロフィールを書いておこう。

歌当番は裏テントでの呼称。表テントでは「音楽の小人」として知られている。裏チームのほかのメンバーの活動範囲が裏テント限定なのに対し、歌当番だけは表テントにも裏テントにもフリーパスの特異な存在である。

住まいは宿主の脳内及び耳の中。「小人ではなくウイルス」という説もある。基本的に耳にした音楽はモーツァルトからCMソングまで何でも歌う。

脳内フルオーケストレーション機能付き。得意技は「ループ歌」及び「替え歌」。愛読書は茂木大輔の『オーケストラ楽器別人間学』及び森雅裕の『モーツァルトは子守唄を歌わない』らしい。

(註:『モーツァルトは子守唄を歌わない』は講談社より出ていたがハードカヴァーは現在絶版中。講談社文庫でなら、今でも手に入るかもしれない。ユーモア音楽ミステリの傑作。モーツァルトの死から18年後、その死の謎をなんとベートーヴェンが探偵役になって!まだ若かったツェルニーや少年だったシューベルトと共に!解き明かしていくという物語。映画『アマデウス』と並行読書するとたまらなく面白いのである。同じ「探偵ベートーヴェンもの」で『ベートーヴェンな憂鬱症』という短編集も出ている。同じ作者の『椿姫を見ませんか?』も傑作)

あ、さて。歌当番による「裏テント版・ファントム談義」本編です…

“The ca---ndle of the Opera is there---,inside my mind♪”

この前ふと歌いまつがえたのが楽しくて、ループ歌にして何度も流してやったら、裏当番がついにキレて「『言いまつがい』投稿の刑」に処されてしまった。

「これが採用されたらお前(=歌当番)の勝ち、採用されなかったら私(=裏当番)の勝ち」だって。

「私が勝ったら、以後二度とそのふざけた歌を歌うなよ」と裏当番。ほほ~、そうか。じゃあ私が勝ったら歌いまくっていいんだな?いいんだな??

先週、念願の『オペラ座の怪人』映画版を見に行った。事前にオリジナルロンドンキャスト版のCDを聴きこみ、ついていたリーフレットで台本もくまなくチェックしていたので、舞台は一度も観ていなくても脳内にはしっかりと「空想の『オペラ座の怪人』」の映像が出来上がっている。その状態で行って、「ほぼイメージ通り・ある部分ではイメージ以上」のものを見られたのだから、やっぱりあの映画は凄い。アンドリュー・ロイド・ウェバー自身が製作に関わっただけのことはある。

それでもやはり、歌当番的にはいくつか物足りない部分があったりして…(^^;)。裏テントのファントム談義はその「物足りなさ談義」及び表じゃ書けない「脱線話」(笑)。

まず、「シャンデリアが落ちるタイミング」が舞台版と映画では違うのが不満。

舞台版では、第一幕の最後で落ちる。例の劇中劇“Il Muto”でカルロッタの声が出なくなり、
その時嘲笑するようにファントムの声が響く

“Behold!She is singing to bring down the chandelier!”
(見ろ!彼女はシャンデリアを落とすために歌ってる!!)

ぐらぐら揺れるシャンデリア。しかしまだシャンデリアは落ちない。

事態を収拾するためにアンドレ(支配人)は急遽演目を一部変更し、ダンサーにバレエを演じさせる。そこに落ちてくるのが大道具と舞台装置担当のジョゼフ・ブケーの死体。

オペラ座大パニック。クリスティーヌとラウルはオペラ座の屋根に逃げる。そこで歌われるのが“All I ask of You”。愛を確かめ合うクリスティーヌとラウル。その陰で嫉妬に打ちひしがれるファントム。

クリスティーヌはカルロッタの代りに伯爵夫人のパートを務めるために舞台へ戻っていく。そして、嫉妬に身を焼かれるファントムによって、シャンデリアは落とされるのだ。カーテンコールに出てきたクリスティーヌの足元に。シャンデリアが砕ける音と共に第一幕は終わる。

映画版では、最後の劇中劇“Don Juan Triumphant”のクライマックスでクリスティーヌがファントムの仮面を剥ぎ取ってからやっとシャンデリアが落ちる。おかげで、舞台版にあったシャンデリア関係のセリフの大半がばっさりカットされた。

“Il Muto”の場面でファントムが嘲笑する「見ろ!あの声でシャンデリアが落ちるぞ~!」は勿論カット。それから、第二幕冒頭の“Masquerade”の場面では、実はシャンデリア関係の歌詞が3つもあった筈なんだ。実はあの仮面舞踏会は「新年のパーティ」であると同時に「新しいシャンデリア披露祝い」でもあって。なので歌の中で支配人のアンドレとフィルマンが
“Here's a toast to a prosperous year!(繁栄すべき新年に乾杯!)”“To the new chandelier!(新しいシャンデリアに乾杯!)”と歌う場面があったんである。

そして、その後登場したファントムもこう脅迫する。

「私の指示に従うことだな。覚えておくがいい、壊れたシャンデリア以上に悪いことがこの世にはあるとな…」

震え上がったオペラ座のメンバー達。支配人アンドレとフィルマンは「馬鹿げている!」といいながらも

“But we dare'nt refuse(しかし拒むなんてことはできない)”
“Not another chandelier(もう代りのシャンデリアもないし)”

と歌って、結局ファントムの要求を呑むことになる。勿論、ここも映画ではカット。その後に続く主要キャスト8名による多重唱もカット。(アンドレ・フィルマン・ラウル・ジリイ夫人・ピアンジ・カルロッタ・クリスティーヌとファントム)

これ、なんで元のシナリオ通りに第一幕のラストでシャンデリアを落とせなかったのかなあ。確かに、舞台版と同じタイミングで落とすと、後の仮面舞踏会の場面が映画版より長くなる。単なる時間制限の問題だったんだろうか。

映画を観ていて、「ここで落ちるぞ」と思っていた箇所でシャンデリアが落ちなかった時、「え?じゃあいつ落とすつもりなの?その前後の辻褄をどう合わせるの?」と思ってしまった。しかし、仮面舞踏会の場面はそれでも上手に辻褄を合わせてあった。シャンデリア関係の歌詞はきちんと歌に組み込まれているのに、それをカットしてもちゃんと曲として成立するように編曲してあったのはさすがだ。アンドリュー・ロイド・ウェバー自身がちゃんとその辺はアレンジしたんだろうな。

その編曲と演出の腕前には舌を巻くけど…やっぱり台本どおりのを見たかったなあ(泣)。時折挿入されるモノクロの「爺さんラウル」の場面を全部カットすれば、その分の時間で「仮面舞踏会」の場面をフルで入れられたんじゃなかろうか。ファントムがシャンデリアのことを口にする二つの台詞も、ね。

その他、映画版ファントム雑感。

劇中劇“Il Muto”の上演中にカルロッタの声がヒキガエル声になっちゃった場面。「なぜ突然ヒキガエル声になっちゃったか」その原因の説明画面が映画にありましたが。要するにカルロッタ愛用の「喉シュッシュスプレー」の中身をファントムが入れ替えたのね。

歌当番、「あれは別に説明してくれなくてもいいんじゃないかなあ」と思った。CD聴きながら「あれはファントムの呪いだ」と単純に解釈していた歌当番(笑)。

それから、クリスティーヌが亡父の墓参りに行く場面。

映画ではファントムが御者を殴り倒し、自分が御者としてクリスティーヌの乗る馬車に乗り、一緒に墓地へと向かってた。それでファントム、彼女の父親の墓からクリスティーヌへと歌いかけるなんて芸当ができたわけ、なんだけど。

ここも、映画観ながら「ちょっと説明的過ぎなんじゃ…」と思っていた歌当番。

いや、わかるけど。わかりやすくていいなとは思うんだけど。でも私の中ではファントムはあまりに長く地下で暮らしすぎて半分妖怪化しているヒト(笑)なので、そういう人間臭いトリックではなくてもっとこう、超人的なことができても不思議じゃない奴であって。

カルロッタにただ「ヒキガエルはお前だ」と暗示をかけるだけで声を出なくさせたり、何の説明もなしに墓場に忽然と現れたり(CD聴いてる限りでは本当に忽然という感じに登場)。そういうことができてもおかしくない存在だと思ってたので(笑)。

ちなみに台本によると、舞台版のラストではファントムはマントで身を包み忽然と消滅する。映画版のファントムは「棲家にある、鏡の裏の通路」を通って「歩いて」退場してた(笑)。

映画のファントムって、やっぱり妖怪じゃなくて人間なんだなあ(爆)。

歌当番は、どうやら台本を読む限り舞台版の演出の方が好きみたいだ。人間は天使にはなりきれないけど、妖怪になっちゃうことはある(おっ、至言)。映画でも、ファントムの妖怪ぶりをもっと観たかったなあと思う。

もっとも、映画でファントムを演じたジェラルド・バトラーは素敵だ。いい体してるなあ…あの胸板の厚み。肺活量ありそうだ(笑)。そしてきっとよく共鳴することだろう。「楽器」としての「いい体」(笑)。あの声を響かせるのには、それなりの体が要るんだよね。彼が歌ってる時に、そっと胸か背中(できれば背中)に触らせてほしいくらいだ(爆)。きっと彼の体中がびりびりと共鳴しているだろう。

“The point of no return”の場面では、クリスティーヌがファントムに背中から抱かれつつ歌う。あの時、クリスティーヌ役のエミー・ロッサムはきっと感じただろう。ジェラルド・バトラーの胸板が彼の声に共鳴して起こる震えを、彼女の背中越しに。「…そ、それはうらやましい…っ!」とつい思ってしまう歌当番である。

ちなみに、ジェラルド・バトラーのファントムはかっこいいとは思うんだけど。でもちょっと、彼は顔だちにおサルが入っているよなあとも思ってしまう(爆)。それと、髪型が少し…あのもみあげはどうにかならんかのう(笑)。あれを見ると映画『マーヴェリック』のメル・ギブソンを思い出してしまうんだけど。(マーヴェリックのメル・ギブソンもちょっとおサル入った顔してたよね)。

あの、どことなくおサルを思わせる…どこがだろう、口元とか?を見てると「あ、だからファントム、おサルがそんなに好きなのか」とアホなことをつい(爆)。

うらやましい、と言えば。

変な話だけど私は、ファントムが歌うのを聴くとうらやましくなってしまうんである。この場合のファントムは、映画版ではなくてオリジナルロンドンキャストのファントム。マイケル・クロフォードによるファントムの方。あまりに美声でセクシーで、聴いているとドキドキしてしまうんだけど。それと同時に心の底から「くそ~っ!うらやましいっ!」そんな思いがこみあげてきてしまう。

クリスティーヌがうらやましいというんじゃない。
ファントムの声に嫉妬してしまうのである。なぜなんだか。

「くそ~っ!私、逆立ちしてもこんないい声出せないよっ!きいっ!羨ましい!」

…そう思ってしまうんだ、なぜか。
逆立ちしても出ないのは道理、私は女なのだから、男性の声を出すのは物理的に無理。それにも関わらず、男性歌手による圧倒的な美声を聴いたとき、私は強烈に羨ましくなるのだ。女性歌手の美声を聴いた場合よりも、もっと強烈な嫉妬。そもそも、女性歌手が歌うのだって「こんないい声出せない」であるはずなんだが…なぜか、サラ・ブライトマンのクリスティーヌ(これも美声)を聴いても嫉妬はしない。

なんでなんだろう。謎だ。でも、羨ましいんである。あの声を出せるというのが。私は、男に生まれたいと思ったことは一度もない。男ができて女にできないことを、羨ましいと思ったこともこれまではなかった。でも、声!あの声を聴くと、男である(男の体を持つ)ことが羨ましいと思う。女には出せない声を出せることが心底羨ましいと思う。

くそ~、男に生まれるなら、あんな声の男になりたいよなっ!
ノーベル賞学者でなくてもいい、特別腕っ節が強くなくてもいい、
絶世の美男子でなくても、オリンピック選手でなくてもいい。
男に生まれるなら、絶世の美声の持ち主に生まれてみたい…

…などと、変なことを思う歌当番である(笑)。一応、これは彼を褒めているつもりなんだけど。…愛情表現としてひねくれすぎだろうか(笑)?聴くと嫉妬しちゃうくらいその声が好きだとか、その声が出せない自分が悔しいと思うくらい好きだっていうのは。

男性歌手が歌うのを聴いて、そんなことを思う女子は他にいるんだろうか。或いは女性歌手が歌うのを聴いて「こんな声が出せない自分が悔しい」と思う男子はいるんだろうか。これは表テントには書けない話だなあと思うので、裏テントに書くことにした。

要するに、私が男性を評価する時に最も重要視するのが「声」であるってだけのことかもしれないけれど。「声」と「しゃべり方」。これ最重要。私がこれまで好きになった男性俳優はコレ全て、美声がポイントであったりする…。

さて、本当はファントム関連でおバカなネタがもう一件ほどあったのだけど、夜が遅いのでさすがに寝ることにする。元気になったら、また書くことにしよう。

次回は「超おバカ妄想篇:ファントムと京極堂の世界が一緒になったら」をお送りします(笑)。
by ura_hoshimi | 2005-02-03 23:12 | 裏チーム入り乱れ