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某所で新月予報を出している「星見当番」の裏日記。裏当番&裏テントチームが執筆を担当


by ura_hoshimi

「借りぐらし」なヤツら

【お針当番記す】

えーと、今回は語りのみなので画像なしです。
しかもオモテと微妙に連動している話。

ジブリで『借りぐらしのアリエッティ』なる映画を製作中だという。
公式サイトで公開されているキービジュアルがかわいいのなんの。

別の映画を見に行った時に、巨大な告知ポスターを見つけたのが
そもそものきっかけ。ジブリの告知ポスターにときめいて
「早く公開を!」と思ったのは久しぶり。もしかして、
ラピュタのポスターを初めて見た時以来かもしれない。

いかにもジブリ作品のヒロインらしい、ボリュームのある赤毛
(なんでだか、ジブリの女の子たちはいつも毛量が多いよね)を
ひっつめポニーテールにして「洗濯ばさみ」でとめている、
ティーンエイジャーの小人の女の子。スレンダーな体型と、
ちょっと吊り目っぽい無愛想な顔つきが大変可愛い。

帰宅してから、うちの姐さんの髪に洗濯ばさみをつけようとして
返り討ちに遭ったのはまた別の話(^^;)☆\(--;)

(や、ちょっとキサラっぽかったのよ実際。
脳内フィルターかかりすぎですか、そうですか)

原作を調べたら、メアリー・ノートンの『床下の小人たち』。
読んだことはなかったが、タイトルだけは昔から知っていた本だし、
同じ作者の別作品は子供の頃の愛読書だった。
映画館を出た足で書店に行って探してきましたさ、
岩波少年文庫の『床下の小人たち』と、その原書、
‘The Borrowers’のペーパーバック。

で一気に読んだ。大変いい。これ好き。
このまんま!このまんまでジブリが映画化してくれたら
どれだけ素晴らしいことか。『ハイジ』の時みたいな
厳密な時代考証で、『ラピュタ』並みの作画クォリティだったら。

しかし公式サイトに行ったら、あああorz
不安要素が色々色々。なんで時代を2010年にしやがる!
なんだって舞台をイギリスの田舎から小金井に移す!
それから「借りぐらしの人々」の身長は10センチじゃねえええ!!

原作読んでみて、ポスターを思い出して不安にはなったんだよ。
アリエッティは原作では「ハットピン」を腰に挿してるんだけど、
ポスターのアリエッティの腰にあるのは何をどう見ても
裁縫用の、頭のところが硝子玉になってる「まち針」だったし。

日本語訳の林容吉(メアリー・ポピンズも訳した人)の解説によれば
「小人たち(作中では「借りぐらしの人々」と呼ばれる)」の身長は
20センチ弱。お針当番が原作を読んでみて得た感触や
挿絵でのスケール感を見てみても、たぶん大人で20センチ弱。
ヒロインのアリエッティは13歳だから、もう少し小さいはず。
でも、10センチはありえない。そこまで小さくはない。

原作はすごく良かったんだ。着想もいいし、細部の描写もいい。
物語の時代は20世紀前半か19世紀の後半か。
場所はイギリスの田舎にある大きなお屋敷。
どうも電気は通ってなさそうな感じなのだけど、
廊下の照明がガス燈なので、なんかそれくらいの時代。

大きな田舎のお屋敷の床下やら壁の裏やらに、
身長20センチ弱の小さい人たちが住んでるんだ。
彼らの自称は‘The Borrowers’「借りぐらしの人々」。
借りぐらしの人々は、食料から家具まで生活必需品を全て
「大きい人間」つまり普通の人間からこっそり「借りて」住んでいる。

よく人間が、輪ゴムとか安全ピンとか、そういう小間物が
「ここにしまっておいたはずなのに、探すとない」というときは、
借りぐらしの人々が持ち去ったのだ、というのがこの物語の設定。

だからといって、借りぐらしの人々が「大きい人間」に
感謝しているかというとそうではなくて、誇り高い借りぐらし族は
「大きい人間は、我らの生活用品の原材料を作るためだけに
存在しているドレイのような生きもの」と思っているのだ。
あるいは少なくとも、そう思い込もうとしているのだ。
彼ら借りぐらし族は、大きい人間のことを「いんげん」と呼ぶ。
原語では‘human bean’(human beingの言いまつがい)だ。

「『いんげん』は我らの生活用品のためのドレイ」って箇所を見て
うちの「可愛いがお仕事の小さい人たち」を思い出したのは
決して偶然ではあるまい…

彼らは、大きな屋敷の色んな部分に家族ごとに別れて住んでいる。
たとえば柱時計の後ろの壁が出入り口の一家は「クロック家」。
客間のハープシコード裏に住んでいる一家は「ハープシコード家」、
居間のマントルピースの上にある大きな鏡の裏に住んでいる一家は
「オーヴァマンテル家」。雨樋に住んでいる一家は「レインパイプ家」。

しかし、物語が始まった時点で他の一家は次々によそに移住して、
残っているのは「クロック家」の三人のみ。父親と母親と、
13歳になる一人娘のアリエッティ。彼らの家の入り口は、
「クロック家」の名のとおり柱時計の傍にあるが、実際の住まいは
安全を考えて入り口からずっと奥にある、人間の台所の真下。

アリエッティの父親は元々靴職人で、人間のところから「借りた」
キッドの手袋とビーズを原材料にボタン止めのブーツを作るのが仕事。
でも、他の一家が移住したので既に靴職人としての仕事はないに等しく、
ただ家族の生活のために食料や吸い取り紙を借りてくる程度。

吸い取り紙は、彼らの家のカーペットなのだ。壁紙は人間の手紙。
壁にかけてある絵は切手。アリエッティは「壁紙」の文字と、
エリザベス朝に流行した豆本を読むことで読み書きを覚え、
「舞踏会の手帳」から落ちた細い小さな鉛筆を使って日記をつける。
アリエッティの母親は、台所の床下に走る水道管に穴をあけて
そこから温水と冷水を「借りて」いる。水を使わない時は、ゴム栓をする。
もちろん、そのゴム栓も借り物。

台所の真下に住んでいるので、食べ物は人間とほぼ同じ。
借りぐらしの一家としては、これはかなり恵まれた食生活らしい。
客間や居間の近くが棲家だった借りぐらしたちは、基本的に
その部屋で人間が食べるもののお余りしか食べられない。
たとえば客間が棲家だった「ハープシコード家」は、
アフタヌーンティーのお菓子ばかり食べて生きていた。
その家の主人が病気がちになり、来客がなくなったので
彼らハープシコード家は移住せざるを得なくなったのだとか。

その家に住む「借りぐらし」最後の生き残り・クロック家は
父親の「借り」の腕前がよすぎた結果、そこに住み続けていることを
誇りにしているが、実際は逆に、腕前が災いして「取り残された」と
言ってもいいような、孤独な生活。一人娘のアリエッティは、
両親よりも早くその孤独さに気付いて、移住を夢見る。

ある日アリエッティは父親について「借り」に出かけて、
そこで人間の男の子に「見られる」。そこから男の子と
クロック一家の交流が始まるのだけど、結局最後には
屋敷に住む大人たちに感づかれて、小人たちは移住せざるを
得なくなってしまう。悲しむ男の子と、クロック夫婦。
だがアリエッティだけは「これで外に出られる」と喜ぶ。

そういう場面で『床下の小人たち』は終わる。
続編では、野に出た小人たちの冒険と、
ついに安住の地を見つけるまでの物語が
数冊に分けて語られるらしい(まだ読んでいない)。

借りぐらしの人々の、細かな生活描写が素晴らしい。
人間(「いんげん」)のところから「借りた」小間物たちが
思いもかけない使われ方をしているところが、言葉と挿絵で
事細かに語られる。ちっちゃいもの好きにはたまらない世界。

ドールハウスが好きだとか、お針当番のように
1/6ドールの下僕をやっている人間だったら、
ハマるんじゃないかなと思う。実際、読んでいる間じゅう
うちの小さいヤツらがちょこちょこ動き回って、
お針当番の裁縫箱からまち針やゴム紐を「借りて」いく
脳内映像が止まらなかった。

…うちの小さい人たちは、隠れもしないけど。
それに、実際の借りぐらしの人たちと比べると、
うちの「かわいい屋さん」たちは大きいのだけど。
借りぐらし屋さんたちの身長は、20センチ弱。
うちのかわいい屋さんたちは、22センチ~27センチ。

でも、大きい人間を下僕だと信じているところは一緒だ(^^;)☆\(--;)
by ura_hoshimi | 2010-04-11 14:22 | お針当番記す