某所で新月予報を出している「星見当番」の裏日記。裏当番&裏テントチームが執筆を担当


by ura_hoshimi

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「もよ」と手描き友禅

【取り急ぎお針当番記す】

DCK話の続きをしたいと思いながら、もう12月の下旬である。
今年は宿主どのの仕事が29日までみっちりあって忙しく、
(しかも、29日の仕事が終わってから忘年会である)
新年は4日から仕事。体調が悪くて寝込んだこともひびいて、
お針当番の縫い物は遅々として進まない。

それでも、娘たちのうちせめて古参の二人には
正月の晴れ着を新調してやりたいとちまちま縫っている。
娘たちは、あれからまた二人増えて(!)九人になった。

本当は全員に着せてやりたいのだけど。
もし、今縫っているのが全部仕上げられれば
数の上では全員に行き渡るだけの振袖ができる。
誰にどの色柄を着せるかが大問題だけど。

(一人、髪色が特殊すぎて、今裁断してある色柄のうち
どれを着せても合わなそうなのがいる。彼女に似合いそうなのは
黒地に白か桜色の花模様で、そういう布地もストックしてあるのだが
―木綿地で、黒地に薄墨色と薄紅の枝垂桜の模様。赤地のも買った―
これから裁断することを考えると億劫なのだ)

ところで、前回書いた「埼玉県のもよ」だが、森茉莉が誰について、
どこでこの言葉を使ったのかがやっとわかった。

こういう言葉が出るということは『マリアの気紛れ書き』か
『ドッキリチャンネル』だろうと見当をつけて探し始めたら、
あっけなく見つかった。やはり『ドッキリチャンネル』だった。

それで、誰が「『埼玉県のもよ』ではない」のかと言うと―
(前回も書いたかもしれないが、森茉莉は誰かのことを
「『埼玉県のもよ』みたい(にダサい)」と悪口を言ったのではなく
「○○は『埼玉県のもよ』ではない」とあくまで誉めたのである。)

カッコが長くなったのでもう一回書くけど、森茉莉が誰を
「埼玉県のもよ」ではないと言ったかというと―
相撲取りであった。お針当番、驚愕(すっかり忘れていたから)。

森茉莉がそう言って誉めた相撲取りは、大鵬と貴ノ花。
(貴ノ花は、もちろん先代の。森茉莉の没年は1987年で、
「若貴兄弟」が藤島部屋に入門したのは1988年である)

ちくま文庫から『ドッキリチャンネル』のダイジェスト版が出ているが
(『ベスト・オブ・ドッキリチャンネル』)、それで言うと93頁の後半から
95頁の前半あたりに大鵬・貴ノ花・そして「埼玉県のもよ」が登場する。

もともと森茉莉は大鵬が贔屓で、大鵬が引退したのち
さらにもう一人「これは人物だ」と思った関取が貴ノ花だったらしい。
貴ノ花の、マスコミを気にしない様子が大鵬を思わせると
誉めていて、そのついでに貴ノ花夫人と大鵬夫人も誉めている。

森茉莉が大鵬・貴ノ花を誉めるのは「顔がいいから」である。
以下、『ベスト・オブ・ドッキリチャンネル』より当該箇所の引用―

又、大鵬と貴ノ花とは、顔もいい。
他の力士とは異って(お針当番註:「ちがって」とルビが振ってある)
二人は、<埼玉県の茂世(もよ、とルビが振ってある)>ではない。
<埼玉県のもよ>というのを、判るように説明すると、
私が幼い時、家に新しく来た女中が縁側に丸く座って、両手をつき、
「埼玉県のもよでございます」或は「栃木県のちかでございます」
と名乗るのを見ていたが、他の大方の関取が何々県の何々と名乗った、
私が幼い時に見た女中の顔をしているのに比べて、
大鵬と貴ノ花とは、そういう力士たちとは異った風貌をしている。
これが<埼玉県のもよではない>という言葉の解説である。
こういう理由も、私が大鵬を贔屓で、その次に貴ノ花が贔屓だと
いうことの、大きな理由である。


言わんとすることはなんとなくわかるし笑えるのだが、
森茉莉から昔の女中の顔であると一方的に決め付けられた
他の力士のことを思うと…やっぱり笑える(ひどい)。

お針当番は大鵬の現役時代も、先代貴ノ花の現役時代も知らない。
森茉莉が大鵬にインタビューした文章が載っている本があって、
そこに大鵬の写真(現役時代)の写真もあるのだけれど
それを見ても「ふーん、これが<もよ>の顔じゃない大鵬か」と
思うだけでいまひとつピンとこない。

お針当番が記憶している相撲取りは千代の富士からで、
それ以前の相撲取りは名前を言われても顔が浮かばない。
千代の富士はかっこよくて大好きで、寺尾は嫌いだった。

寺尾は相撲取りの癖に江戸時代の美男の役者みたいな
白くてつるっとした面長の顔なのが気に食わなかったんである。
特にあの鼻筋のあたりが嫌いで、当時お針当番は彼の顔を
「あのアリクイみたいな顔」と言っていた。

アリクイじゃなければ、ブルテリアかアナグマだ。
あの中高の顔の、額から鼻筋にかけてカーブしている感じが
アリクイやブルテリアの鼻面付近にそっくりなんである。

その、顔が嫌いな寺尾だが随分長いことがんばってるのは
すごいことだなあと思って見ていたら、ある日引退して髪を切り、
普通のスーツ姿でテレビに出てきた。そうしたらあら不思議。
あまり嫌な顔ではなくなっていた。

江戸時代の二枚目役者みたいな顔はそのままだったが、
ちょんまげ以外の髪型だとそんなにいやな顔ではないことを発見。
髪をひっつめていなければ、アリクイっぽさも目立たないらしい。
女性はヘアスタイルで見た目がだいぶ変化するけれど、男の人も
髪型は重要なんだと初めて思ったのが、この「寺尾の引退」だった。

閑話休題。

グラフィック社から出ているお人形の雑誌(ムック?)
『Dolly Dolly』の最新刊(Vol.12)は着物特集なんだそうだ。
その中に、人形用に自分の手で友禅染の布を作る方法が
載っているという。お針当番、それを知って大興奮。

実はお針当番、シルクペイントの材料と白い絹地を買って
自分で友禅風の布地を作ろうかと思っていたところなのだ。
もちろん、人形用の着物にするためである。

どうしても、人形サイズに作ってみたい着物があるのだ。
しかも、手持ちの人形で一番小さいベッツィサイズ。
モデルのサイズに合わせて、柄は小さくなくてはならない。
自分の手で描くなら、模様の大きさは自由自在だし、
探しても見つかりそうにない模様だって描ける。

もし、当番が思い描いたとおりの模様で布が作れれば、
あとは帯の問題をクリアすれば着物ができる。
作りたいのは、赤と白に大きく染め分けたところに
赤のところには白で、白のところには赤で、
列をなして飛ぶ燕の模様がうねっている友禅だ。

(と、書くとごく小数の人には当番が何をしたいかが
わかってしまうだろうと思う。そう、「あの着物」を作って
ベッツィに着せてみたいのだ)

あとは白茶に金糸で小さな立涌に菊が入った帯地を
手に入れられればいい。これはどこかにありそうな気が
するんだ。鬱金色の縮緬と緋縮緬はどこでも手に入るしな。

年内はずっと仕事が忙しくて、大型書店に立ち寄る暇も
なさそうなので、『Dolly Dolly Vol.12』はネット注文にした。
なんでも、付録の小冊子の封入漏れがあったらしくて
出荷が遅れているらしいがいつ届くだろう。到着が楽しみである。
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by ura_hoshimi | 2006-12-24 23:00 | お針当番記す