某所で新月予報を出している「星見当番」の裏日記。裏当番&裏テントチームが執筆を担当


by ura_hoshimi

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ババパッチ後日譚

【お針当番記す】

「股引のことを『パッチ』と呼ぶのは『スパッツ』の訛りか?」問題。
あの後検索をかけてみたら、どうやら「パッチ」は英語ではなく、
韓国語でズボンを現す言葉に起源を持つらしいと判明。

なお、股引のことを「パッチ」と呼ぶ人は関西方面に多いらしい。
そうなのか。お針当番は関東育ちで、両親は九州出身だが、
少なくとも育った場所と両親の実家方面で「パッチ」という言葉を
耳にしたことはないのはそのせいか。

肝心の「カモイ式ババパッチ」の履き心地であるが、
これはもう、暖かくて締め付けがきつくなくて快適。
薄手でゴロゴロしないのに、腹巻並みに暖かだ。

ロングガードルや、普通のスパッツも防寒着として
優秀だというが、肌が弱く、締め付けにも弱いお針当番は
ちょっと固めのガードルなど履くとウエストがかぶれたり、
足の付け根の部分を締め付けられて吐き気と眩暈で
ふらふらになったりする。ババパッチの柔らかさ薄さは
とてもありがたい。

膝上の正面にラインストーンをつけると、膝を組んだときに
足にラインストーンが当たって痛いんじゃないかと思ったけど、
そんなに心配しなくても大丈夫のようだ。跡もつかないみたいだし。

でも、あまり長時間膝を組んだままでいるのは血行に悪いので、
普段は足を組まずに座っている。足を組むのは膝のガラスを
思い出したときだけ。道を歩いているときに膝のガラス玉を思い出すと、
見えはしないけど思い切りキラキラさせたくて、つい歩幅が大きくなる。
ここ二年ほどのスカートの流行が裾幅の広いふわりとしたタイプで
よかったなあと思いながらふわ揺れスカートの裾を蹴り上げて歩く。

鴨居羊子の文章には、女子の歩みを大股にする力がある。
読んだ後歩き出すと、自然に歩幅が大きくなるのだ。
カモイ式ババパッチにも、同じ効果があるらしい。
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by ura_hoshimi | 2005-12-30 01:15 | お針当番記す

カモイ式ババパッチ

【お針当番記す】

たぶん、2005年最後となりそうな裏テント日記更新である。
本日のお相手は、お針当番。わけあって、お針当番の本拠地である
「縫い物カゴ」の更新を当分出来ないのでこっちにやってきた。
モノがモノだけに、向こうに出しにくいというのもあるし。
本日のお題は下着。その名も「カモイ式ババパッチ」である。

「カモイ」とは下着デザイナーで画家の鴨居羊子氏のこと。
「ババパッチ」はパパラッチやバーバパパに似た響きだが、
要はアレである。女性用の防寒下着、昨今は「ババシャツ」と呼ぶアレと
同じ素材で出来たモモシキ(股引・パッチ)のこと。色んな長さがある。
ババシャツ素材で出来たパッチだからババパッチとお針当番は呼んでいる。

当番はこれまでババシャツは愛用してもババパッチを履いたことはなかった。
同じ防寒下着とは言え、ババシャツ着用者とババパッチ着用者との間には、
深くて暗い河がある、とお針当番は思う。

しかしこの冬の寒さはババシャツと「ほぼ日ハラマキ」だけではしのぎ切れず、
とうとう吸汗発熱繊維で出来たパッチを買ってしまったのである。
ルビコン河を渡ってしまったのである。ババパッチデビューである。
黒い八分袖の「今年のババシャツ」とお揃いの、膝丈ババパッチ。
新しい境地に足を(脚を)踏み入れてしまったのである。
お針当番はひとつお姉さんになってしまった。

ババシャツを着、ババパッチを履いた自分の姿をイメージしてみる。
色気ないなあ。同性にさえちょっと見せられない姿である。
道を歩いていて突風でスカートがめくれ、中を見られてしまった日には
ショックで(自分が)立ち直れないかもしれない。それは困る。
なので、お針当番は買ってきた黒いババパッチを改造することにした。
色気をなくした分、いたずらっ気で補おう。幸いこのお針当番、
もともと色気が少ない代わりにいたずら心はたんまり持ち合わせている。
改造のお手本は、鴨居羊子だ。

ある日、私は綿メリヤスの黒タイツをヒザのところでちょん切り、
ゴムを入れて、ぴっちりしたいわゆるパッチにつくりかえて、
はいてみた。ひざのところは白く光るガラス玉を縫いつけた。
スカートの下はスリップをつけないでこのタイツである。
ひどくあたたかいし、スポーティなので、一人でに歩くのまで
バレリーナ気取りに軽快になる。

つねに黒装束で黒い花の印象を与えるバレリーナの
リドミナ・チェリナは私の好きな一人だが、このパッチの奥には
彼女のくすんだ微笑がかくされているようだった。

取材先で、わざとかろやかに脚を組む。
ひざのガラス玉が組んだ脚もとからキラリと光る。
私の目は何食わぬ大真面目さでザラ紙と鉛筆に向けられているが、
取材先の相手は、ひざの先の宝石に魅せられてアッと言う。
言ったかどうかは知らないけれども、ギクリとして、
私の脚の宝石と私の顔とを見比べてドギマギと、
言わなくてもいいことまでペラペラしゃべってくれるにちがいない。
何とも爽快な気持。指に宝石をつけるのではなく、
内臓に宝石をはめているなんてイカスネエ。
これがほんとの奥ゆかしさというものだ―と一人ごとをよく言った。

(鴨居羊子『わたしは驢馬に乗って下着をうりにゆきたい』より
「ピンクのガーターベルト」)


女の人の膝から上って「内臓」だったんだねえ、とこの文章を読むと思う。
戦後間もない、まだミニスカートの流行も来ない頃の話。
戦前は洋装よりも着物が多かったのだから、膝から上はおろか、
足首から上は全部、秘めておくべき「内蔵物」だったのだろう。

なんだか内臓っていうと、心臓とか肝臓みたいな、皮膚がなくて
粘膜だけでできていて赤くてぴくぴく震える、ああいうのだけを
呼ぶものだと思っていたけど、服の内側にあって人目に晒されない、
晒されるべきでない(なかった)部分のことをも、鴨居羊子は
「内臓」って呼ぶんだ。内臓ねえ。膝から上は、内臓か。

昨今のオタク系男子が、ミニスカートとオーバーニーソックスを
履いた女の子の、ソックスとスカートの間にわずかに存在する
素肌の太腿部分を「絶対領域」などと呼んでいるのを思うと、
隔世の感がある(ところで何でそう、知らなくてもいいことばかり
知っているんだ私は)。いかんいかん。内臓じゃなくて、パッチの話ね。

黒いパッチは、もうある。綿メリヤスの黒タイツを切って、
自分で縫わなくてもいいのだ。便利な時代だな。
「白く光るガラス玉」を手芸屋さんで物色して買ってきた。
丸い(面カットしてない)ガラスのビーズ玉かなとも思ったけど
「キラリと光る」ものでなければならないので、ダイヤ調に
カットしてある、糸で縫いつけるタイプのラインストーンを買った。

「宝石」選びは重要である。オカンアートにならないように、
ファンシーにもなりすぎないようにしなくてはならない。
町の「洋品店」にいまだに置いてある、ゆったりカットソーの上に
アイロン接着のラインストーンで豹の上半身が描いてあるような
あんな感じになってはならない。リボンやハートの形に、
小さなラインストーンが並んでいるシールみたいなのも駄目だ。
バブルの時代前後に流行した、ストッキングの足首部分に
同じようなストーンがついていたのを思い出すから。

「石」はゴロっと大きめで、おもちゃっぽいのがいいと思った。
お姫様調ではなく、サーカスみたいにできたら成功だ。
角ばった四つ爪留めのラインストーン、大きいの二つと
小さいの四つ買ってきて、パッチの膝部分に手で縫いつけた。
それが、これ。国書刊行会の『鴨居羊子コレクション』と一緒に。

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これが、お針当番製「カモイ式ババパッチ」。
「お針当番製」と言ったって既製品に石を縫い付けただけだけど。

ラインストーンの縫いつけ位置は膝の横のところか、
それとも膝のお皿の上に当たる部分かと迷ったけど、
「脚を組みかえるとき見える」という一文を手がかりに、後者を採用。
このために脚を何度も組み替えて「石が見えるのはどちらの時か」と
検証を重ねたお針当番である。自分の馬鹿さ加減を誉めてやりたい。

パッチの全体像を撮った写真だと、「宝石」が目立たないけれど、
履いて、ちゃんと体の上でみなくてはこの「石」の効果は実感できない。
かなり目立つ。馬鹿馬鹿しくて楽しい。もう風でスカートがめくれて、
中が見えてしまっても平気だ。いっそ風よ吹け吹けとまで思う。
(見てしまった人が気の毒というものだから、やはり吹かない方がよい)

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「宝石」部分の拡大。大きな6mmのガラス玉を一粒だけだと、
ちょっとバランスが悪かったので両脇に4mmのを二粒付けた。

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この写真を撮ったのはクリスマスシーズンだったので、
ガラス玉つきパッチをくるくる畳んでリボンを巻いた。
クリスマスカラーの赤・緑・金の細縞グログランリボン。
元祖「ガラス玉付き黒パッチ」の話が載っている鴨居羊子の本と、
この「復刻版カモイ式黒パッチ」を一緒にしてピンクの紙で包んで、
楽しいもの好きで話のわかる女性へのクリスマスプレゼントにしたいな。

本当は、このカモイ式黒パッチのことが書かれている文章は
タイトルを「ピンクのガーターベルト」と言って、メインの話は
鴨居羊子さんが初めて買った、「ピンクのはなびらのような」
舶来物のガーターベルトの話だ。

このガーターベルトについて書かれた部分もとても素敵で、
鴨居羊子さんの世界を象徴するような文章なのだけど、
お針当番はこのピンクのガーターベルトの前に登場する
「バレリーナの練習用黒タイツを切って自作した、膝のところに
ガラス玉のついた黒いパッチ」の話が妙に好きだ。
なので、私が鴨居羊子の本に添えて贈る下着は、
独断と偏見と愛情を込めて黒パッチ。

ところでなんでいわゆる股引のことを「パッチ」って言うんだろう。
かなり昔から「パッチ」と呼ばれているみたいだけど、
もしや「スパッツ」が訛ったのかな。形はスパッツそのものだもんね。

もっとも「ももひき」を「パッチ」と呼び始めた時代の「スパッツ」は
いわゆる今のスパッツではなくて、男の人が靴と靴下の上に
着用して、足の甲のあたりを覆う布製のカバーのことだったと
思うのだけど。

(ええとつまり膝まである足袋のつま先と足の裏がないみたいな代物で、
黒とか茶の革靴の上に白やグレーの「スパッツ」をつけて
その上にズボンを履いてスパッツをのぞかせる、昔の紳士のおしゃれ。
ウッドハウスの「ジーヴズもの」でも主人公がスパッツをつけてるし、
ビリー・ワイルダーの映画『お熱いのがお好き』でもギャングのボスが
このスパッツを靴の上につけていて、そのせいで綽名が「スパッツ」なの。

で、日本じゃ足先だけが白い猫のことを「白足袋を履いてる」っていうけど
同じような猫のことを英語では「白いスパッツを履いた猫」って言って、
T.S.エリオットの詩でも「バストファー・ジョーンズ・イン・ホワイト・スパッツ」
って言っている。黒い豪華な毛並みに四本の足先だけ白いグルメな紳士猫、
バストファー・ジョーンズのことを歌った詩で、エリオットの詩をもとにした
ミュージカル『キャッツ』でもこの歌が歌われる。)

パッチとスパッツから話がそれっぱなしになるけれど、
お針当番の子供時代の語彙には「パッチ」という言葉はなくて、
お父ちゃんが履くのは「ももひき」「ステテコ」であり、
子供が防寒用に履くものは「タイツ」と「毛糸のパンツ」であり、
おばあちゃんが防寒に履く丈長の下ばきは、しいて呼ぶとすれば
「ズロース」であった。

子供の頃のお針当番が、初めて「パッチ」なる言葉に遭遇したのは
何と、アニメの『はいからさんが通る』であった。
紅緒さんの幼馴染の「蘭丸」が(余談だが幼かったお針当番は、
アニメの蘭丸を見て途中まで女性だと信じて疑わなかった。)、
「花柄のパッチ」を愛用しているという場面で(笑)はじめて、
あの足に履く細長い下着をパッチと呼ぶというのを知ったのだ。

『はいからさんが通る』では、許婚として伊集院家に入った紅緒さんを
(思えばこれって、正式に結婚する前なんだから「足入れ婚」って
呼ばれるものだよね)蘭丸が心配して、女装してメイドになって
伊集院家に潜入するんだよね。ご丁寧にストレートヘアだったのを
電髪かけてカーリーにして(笑)、メイドドレス着て。可愛いの。

で、色々騒動は起こしたものの結局「お蘭」はメイドとして
伊集院家に住み込むことを許されて。だけど、夜になって
ハタと紅緒さんがヤバいことに気付く。「花柄のパッチ!!」
花模様とは言え、パッチは男性用下着。蘭丸ご愛用のアレを
着用に及んでいる姿を他のメイドに見られたら、「お蘭」が
男だってバレてしまう。

慌ててメイド部屋に走って、仕事着から寝巻きに着替える前に
蘭丸をつかまえようとする紅緒さんだが、メイド部屋のドアを
開けた途端おそろしいものを見て気絶してしまう。
蘭丸は「お休み前のパック中」で、白いヒラヒラのネグリジェを
ご着用あそばしてすっかりくつろいでいたのである。
さすが蘭丸。紅緒さんと違って用意周到である。
ところで何で、紅緒さんは蘭丸が愛用しているパッチのことまで
知っているんだろうね。幼馴染とは言え普通は下着のことまで
把握してないと思う。

今年も、最後まで「話はあっちに飛びこっちに飛び」でした。
きっと来年も、こんなでありましょう。これにて本年の書きおさめ。
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by ura_hoshimi | 2005-12-29 21:14 | お針当番記す

プランセスを食してみた

【本編に入る前に裏当番記す】

最近週一回更新すればいい方になっている裏テント日記である。
表も裏もお針カゴも更新が滞りがちになっているというのに、
早ければこの年末から、遅くとも年明けにはもう一つ、
新しいブログを作ろうなんて正気の沙汰か、な裏チームである。
(開設の暁には、お針当番と歌当番が主に担当することになる)

それはさておき。昨日見つけた小ネタ。
長崎バイオパークなる動物園(なのか?行ったことないのでわからない)で
「金色に光るチョウのさなぎ(生きてる)」で飾ったクリスマスツリーが
展示されているという。

(あ、「金色に光る」は「チョウ」ではなく「さなぎ」にかかる。)

くだんの「金色のさなぎツリー」の紹介ページ

記事だけ読んで想像していたよりも、ツリーがちっちゃいなあ。
もっと「どーん!」と大きな(せめて子供の背丈ほど)のを想像していた。
なるほど、さなぎが金色で透明感があって、エナメル素材みたいに
ぺかぺかと光っておる。薄いガラスをふくらませたボール飾りの、
ちょっといびつなもの、といった雰囲気だ。

このさなぎさんは「オオゴマダラ」なる大きなチョウのものだそうだ。
裏当番はチョウに詳しくないので、オオゴマダラという名は初耳だった。
説明によれば、ツリーに飾られたさなぎさんたちは皆「生きてる」そうで、
(しかしこの作り物感全開のツリーに、どうやってさなぎ固定したん…?)
このツリーから羽化したオオゴマダラは、バイオパークの熱帯館で
見られるということで、ある。

はっはっは。すごいアイデア。担当学芸員さんグッジョブ。
「生きたさなぎで飾った、チョウが羽化するクリスマスツリー」
一陽来復という感じで、よろしいんじゃないでしょうか。
でも裏当番なら、さなぎ以外の飾りも金色にして、統一感を出すぞ。

【本日のメイン。食事当番記す】

金曜の夜、仕事帰りに銀座まで行った。
靴を買うのが主目的だったが(宿主どのの靴のサイズはでかいので
いつも決まった店で買う)、もうひとつの目的は「プランセス」を買うこと。
「ペルティエのプランセス」少し前から気になっていたお菓子である。

銀座では、三越の地下にペルティエがある。
夕方遅い時間だけど、プランセス、あるかな…あった♪
ソフトボール大のがひとつ420円。メロン大のがひとつ2100円。
メロン大のには、パウダーブルーのワイヤー入りタフタリボンが
蝶結びにかけてあって、とても愛らしかった。いいなあ。

ソフトボール大のを二つ買って箱に入れてもらい、
一口サイズの「プランセス・べべ」の6個入りも一箱包んでもらう。
ケーキコーナーの隣にある、パン売り場にも惹かれたが
これから靴屋で買い物をして大荷物になることを考え、泣く泣く断念。
次は、パンを買いに来よう。それからサヴァランも。

(ケーキのショウケースの中に、美味しそうなサヴァランがあったのだ。
食事当番はサヴァランが大好きで、売っている店では必ず買う。
サヴァランを売っているケーキ屋さんがもっと増えたらいいのにと思う。)

(余談。一度どこかの店で食べたイチジクのサヴァランは美味であった。
リング型のブリオッシュの、真ん中にあいている穴のところに
ラム酒入りのゆるく泡立てたクリームが載せてあって、その下に
四つ割りにしたイチジクのコンポートが隠れているのだ。
生地にしみこんでいるシロップも、イチジクコンポートの煮汁と
ラム酒をブレンドしたもので、いい香りで美味しかった。)

(更に余談。
「ペルティエ」について検索していたら、日本の「ペルティエ」は
「ユーハイムグループ」であることがわかった。へえぇぇ。
あのバウムクーヘンのユーハイム、というか、森茉莉好きなら
「ロオゼンシュタインのモデルの」と呼びたいユウハイム。
「ユウハイムの系列」「プランセス」「サヴァランも売ってる」
この三点により「ペルティエ」は食事当番の脳内に
「森茉莉系菓子屋」としてしっかり登録された。「プランセス」で
森茉莉アンテナが動いてしまうのは、ある随筆の中に
「これならフランスのマダァム・ラ・プランセス(公爵夫人)
でなくてもできる」という一文があったという、ただそれだけの
理由による。ともかく、次回はペルティエのサヴァランを買うぞ。)

さて本日。紅茶を淹れて「プランセス」の試食である。

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背後の黄色と白の箱が、プランセス。
手前の、焦げ茶のリボンがかかった黄色い箱は、プランセス・べべ。

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例によって、ポットとカップ&ソーサーとお菓子の皿の色柄が
激しくバラバラである。思えばうちには、洋菓子を載せるような
おしゃれな「デザート皿」なんてものがないのであるな。
今度、探して買ってこよう。

ポットとカップの柄がお揃いでないのもこまりもの。
このカップ&ソーサーの柄はかわいくて好きなのだが、
同じシリーズの紅茶ポットのシルエットが気に喰わなかったので、
買わなかった。円筒形で、肩のところが四角かったのだ。
紅茶ポットは中で茶葉がちゃんと回るように、丸くてなで肩のがいい。
中に変な陶器の茶漉し(取り外せる)なんかついてないのがいい。

画像に写っているポットは、雑貨屋さんで見つけた安いもの。
柄が子供っぽい感じだが、形はいい。
色・柄・カップのシルエット・ポットのシルエットと四拍子揃った
究極のティーセットを見つけるまでは、食事当番に
このポット以外の選択肢はないのである、と贅沢貧乏風に言ってみる。

紅茶は、考えた末にストレートにした。茶葉は「キャンディ」。
発音は「キャンディ」だけど綴りはKANDY(スリランカの地名)。
いわゆるセイロン系の、軽い風味のお茶。

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「プランセス」のアップ。白くていかにも柔らかそうに見えるけど、
実際は硬くてサクサクしてる。そのギャップが不思議な感じ。
六時間もかけてじっくり乾燥焼きしたメレンゲに、
バタークリームを挟んで粉砂糖をかけてあるらしい。

どれ、では食べてみようか。…フォークで刺したら細かく崩れた。
上のメレンゲは中がドーム状というか、空洞になっていて
その「天井」が崩壊してえらいことに。美味しいんだけどこのお菓子、
どうやって食べればいいんだ?!

フォークで綺麗に食べるのは無理だと判断した食事当番、
誰も見ていないことを確認して、手で持ち上げて食べた。
姫御前の、いやプランセスのあられもない食べ方である。
「人前で綺麗に食べるのが難しいケーキナンバーワン」の
ミルフィーユよりも強敵だと、食事当番は思った。

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フォークで、途中まで攻めたプランセスの断面。
甘くて、サクサクしてて、ちょっと歯にくっつく。
バタークリームが思ったよりもこってりしてた。

とても甘いが、メレンゲ好きの食事当番の口には合う。
紅茶は無糖・ストレートが正解だと思った。
多分、この甘さにはセイロンよりももっとスモーキーな
キーマンかラプサンスーチョンなんかも合うだろうと思う。

それにしても、細かい欠片が散って大変だった。
あの大きな、リボンのかかったメロン大の方を買わなくてよかった。
あれは二人以上用だと思うけど、一体どうやって切り分けるのかな。
このお菓子を美しく食すには、マカロンサイズの「べべ」を選ぶのが
一番賢いのかもしれないと思った。

まだ、「プランセス・べべ」の箱が未開封でとってある。
「レモン」と「プラリネ」の二種類の味があって、三つずつ入っている。
こちらは1月4日まで日持ちがするというので、来週以降の、
仕事が立て込む時期の心の慰め用に取っておいて、大事に食べよう。
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by ura_hoshimi | 2005-12-17 14:16 | 食事当番記す

パッパの呪い

【裏当番記す】

宿主どの、急な発熱でダウン。
顔の大きさの割に狭い額に「冷えピタ子供用」を貼って寝たら
(大人用を貼ると額からはみだして髪にくっつくのである)
朝起きた時ジェル部分がすっかり乾燥してカピカピになっていた。
結構凄い熱であったようだ。熱があるだけで、喉や鼻は無事なんだけど。

今日は昼頃に起き出したものの、文字を読んでも頭に入らず
ブログを更新する気力も針を持つ気力も湧かず、
うかない顔で一日を過ごす。表当番も裏チームも活動不能。
回復には時間がかかりそうである。

さて表題の件。

表テントの話になってしまうが、今月は新月が二回ある。
一回目は12月2日の午前0時01分からの射手座新月。
二回目は大晦日・12月31日の12時14分からの山羊座新月。

表当番は最近、12サインのブックガイドに凝っている。
新月予報に合わせて月一回各サインにちなんだ本を紹介するのだが
次に書くのは「山羊座のブックガイド」である。で、今日は回らない頭で
山羊座のブックガイドに出す本や作家のことをぼんやり考えていた。

表当番としても裏当番としても、「山羊座の作家」といったら
「あの親子」は外せない、ということで意見は一致している。
お父さんが山羊座なのはすごく納得。だってすごく土星だから。
(「お父さん」と占星術両方を知らない人にとっては意味不明の一節)

お嬢さんも山羊座、と知った時は思わずのけぞった。確か数年前の話。
こだわりの強さや入り組んだ文章、動作のゆっくりさ加減からして
「この人、もしや『固定サイン』では?」と思っていたのだ。
(ちなみに最初に彼女のサインとして想定していたのは水瓶座である。
水瓶座は風の固定サイン。同じ固定サインでも獅子座の雰囲気ではないし、
牡牛座だと悪い冗談にしかならない。牟礼モイラは愛の肉食獣だけど、
愛の反芻動物というのは困る)

「あの親子」とは、父・森鴎外と、その長女・森茉莉。
表当番と裏チームのお気に入りは長女の方で、
森鴎外の作品は高校の時に読んだきりである。
表当番と我ら裏チームにとって「森茉莉は森鴎外の娘」ではなく
「森鴎外は森茉莉のパパ」なのだ。森茉莉式に表記するならば
「パパ」ではなく「パッパ」である。

その「パッパ」について。
裏当番は森茉莉の作品を愛するあまり、ほぼ全ての文言を
「鵜呑みにしてぬうと育っ」てきたのであるが、一点だけ、
どうにも呑み込めないことがある。それは「パッパの容姿について」。

「パッパ」鴎外は娘の「お茉莉」を大変可愛がり、何かにつけて
「上等、上等、お茉莉は上等」と褒めて育てたようだ。
娘の方からの「パッパ賛美」も凄い。パッパの頭脳から容姿まで
上等でかっこよくて美しくて、痰を吐く音まで「独逸語の喉の音みたい」で
素敵であったのだとあちらこちらで書いている。

パッパが「当代一の頭脳を持つ男」だったというのは、まあいいとして。
容貌に関しては指先が清潔で美しいとか唇のうねり具合がかっこよいとか
書いてあったのが印象に残っている。その文章だけをずっと読んでいると
裏当番の頭の中にはそれはそれは渋かっこよく美しい「父・森鴎外」像が
浮かんできてしまうのだ。裏当番の個人的な好みで言うと津川雅彦とか
仲代達矢とかのような(仲代達矢だとちょっと可愛らしすぎるかもしれない)。

で。そういう頭で実際の森鴎外の写真を見ると「んんん~?」と思うのだ。

「パッパ…美しい、か?」
あれはやはり、親の欲目ならぬ娘の欲目なのかなあ。

娘の目に写った「美しくかっこよい父」は、
佇まいやディテールの美しさだったのかもしれないのだけど、
ネット検索や本に載っているので見られる森鴎外の写真は
ほとんど胸から上のアップで、また横向きの顔写真が多く、
「清潔で美しい指先」は写っていないし、「かっこよくうねった口元」は
カイゼル髭に隠れて見えない。

今日は、イメージ検索で「パッパ」の画像を探してみた。
ほとんどが和服を着て横顔で写っているものばかりだったけど
一枚だけかなり若い、軍服を着て正面を向いている鴎外の画像があった。
他の写真と違って、黒い髪をなでつけたみたいな頭をしている。
お髭もきっちりとセットしてある。あれは何か塗って固めていたのかな。
幼い「お茉莉」が見ていた「軍服の父」はこのくらいの若さだったのだろうか。

その写真は、他の横顔の鴎外に比べたらかっこよかった。
しかしそれを見ながら裏当番が思ったのは
「この『サリーちゃんのパパ』みたいなのが、
『かっこよくて素敵なパッパ』なのか…?」で、あった(爆)。
たしかにカイゼル皇帝みたいでは、あるけれど。

一度鴎外のことを「サリーちゃんのパパ」だと思ってしまうと
そのイメージが抜けなくなってしまった。あの髭のせいだ。
とばっちりで『甘い蜜の部屋』の牟礼林作のことも
「サリーちゃんのパパ」でしかイメージできなくなってしまった。

幼い娘を膝に乗せ、髪を撫でてやりながら
「お茉莉は上等、お茉莉は上等」と囁く「サリーちゃんのパパ」。
座敷に盥と競馬石鹸を並べ、葉隠武士の切腹のごとき手順で
身体を拭き清める「サリーちゃんのパパ」。
文豪のイメージ台無しである。ごめんパッパ。

裏当番は「パッパ美男説」に納得できないだけであって、
決して「パッパ鴎外」が嫌いなわけではない。念のため。
もっとも、『舞姫』の主人公・太田豊太郎は嫌いで、ある(森茉莉調)。

鴎外の子供たちがそれぞれ書いた父・鴎外像を読むのはかなり好きだ。
子供たちの目から見た鴎外像でお気に入りなのは於兎(おと・長男)だったか
類(るい・次男で末っ子)だったかが書いていたエピソードで(あ、類の方かな)
次女の杏奴(あんぬ・類のすぐ上の姉)のことを「アンヌ子」と、
次男・類のことを「ボンチ子」という愛称で呼んでいた、というものだ。
類は、真似して父を「パッパ子」と呼ぶこともあったという。

「ボンチ子よ パッパ子ボンチ子よ」「パッパ子よ ボンチ子パッパ子よ」
…というおかしな呼びかけあいを文豪とその息子が展開する箇所があって、
裏当番にとって百鬼園先生の「ノラやお前か、さうやって(以下略)」に
匹敵する笑い所である。

問題は。「鴎外サリーちゃんのパパ説」に頭を侵食され、
魔王な鴎外と、王妃様な志計さんに見送られて
黒猫ジュリエットを従えた森茉莉がホウキに乗って飛んでいく映像が
頭の中に浮かんでしまうことで、ある。

まほう~のくに~からやってきた
ちょっと~チャ~ム~な おん~なのこ
マリィ~ マリィ~♪

パッパの呪いである。誰かたすけて。

この件はこれでおしまいなのであるが、森茉莉の「美男の描写」で
もう一つ首を捻っている件があったのを思い出した。
これまた非常にハンサムであったと書いている「矢田部達郎」のこと。
誰だったか、女性相手の対談で森茉莉は彼の容貌を評して
「髭が濃くって剃り跡が青くて当麻蹴速って感じで」と言っている。

「当麻蹴速(たいまのけはや)」って…日本書紀に出てくる
「はじめて相撲をとった力持ちの人」ですが…?
文豪を父に持つ明治生まれのご令嬢であることを考慮しても、
当麻蹴速って、美男子の形容としてアリなのだろうか?

他に、矢田部の容貌を「メフィストフェレスのような」とも言っていた
記憶があるので、髭が濃くて剃り跡が青いということを考え合わせると
ダークで男臭い感じの美男であったのだろうか…。セクシー?

ちなみに、当麻蹴速の対戦相手は野見宿禰(のみのすくね)で、
この対戦で蹴速さんは敗退している。
フランスで粋な恋愛場面を見せ付けるメフィストフェレス氏の
容貌を形容する言葉としては、ううむ、かなり微妙だと思うが如何。

対談相手は、この「当麻蹴速って感じで」発言はスルーしていたけど
21世紀の読者で、あれを読んで「その形容ってどうなの!?」と
ツッコみたくなったのは裏当番だけではないと思うのだけど。
いや、それとも今は「当麻蹴速」がわからない人の方が多いのか。
でも森茉莉を読む人だったら知っている人も多そうだ。

裏当番は、矢田部達郎がどんな顔をしていたか知らないので
写真があったら是非見てみたいものだと思っている。
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by ura_hoshimi | 2005-12-04 23:16 | 裏当番記す