某所で新月予報を出している「星見当番」の裏日記。裏当番&裏テントチームが執筆を担当


by ura_hoshimi

赤いべべ着た

The time has come
(とうとうこの時が来た)
to be a lover from the Argentine,
(アルゼンチン生まれの伊達男に変身だ)
to slick my hair down with
Brilliantine,
(髪をブリリアンタイン←整髪料 で撫で付けて)
and gargle heavily with Listerine.
(リステリンでがっつりうがいをしよう)

上記はミュージカル『プロデューサーズ』の一曲
‘Along Came Bialy(「ビアリィ様登場」、ってとこか)’。

ブロードウェイの昔敏腕・今落ち目のプロデューサー・マックスが、
ニューヨーク中の金持ちの老婦人からお金をかき集めるため
お婆ちゃん好みのラテンな色男の扮装をして出かける時に歌う。
演じるネイサン・レインは情けな系のちっちゃい小太りなおじさんで
扮装したところでどこがラテンな色男なのかさっぱり、って感じだが
劇中のお婆ちゃん連には大ウケ・大モテである。

今日のお針当番、マックス・ビアリストックではないけれど
‘The time has come’な気持ち。とうとうこの日が来た。
ブログのスキンも「友禅・赤」に変えたし(派手!)
敷物代わりの格子柄ブランケットにアイロンも当てた。
予定よりも二ヶ月も遅れて、そろそろ紅葉の季節になって
やっと完成したのが―これ。


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とうとう作ってしまった。真っ赤な単衣の長襦袢…のようなもの。
長襦袢にしては長すぎる着丈に、中途半端な長さの振袖。
襦袢と言いながら、これに重ねて着る表着は作っていない。
コスプレ用長襦袢とでもいうか、これだけを単品で着る(着せる)。

元は表参道の道端で売っていた古着の山から発掘した帯揚げ。
相当古いらしく、虫か劣化によるものかわからない小穴がちらほら。
しかし素材は一応絹である(と、お店のおじさんが言っていた)。
一枚500円なりき。高いか安いかようわからん。

生地が薄くてふにゃふにゃしていて、泣きたいほど縫いづらかった。
絞りという布の性質なのか、どんなにアイロンでおさえても
縫い代が落ち着かない。

襟や袂がぷくぷく浮いてくるので仕方なく端っこを星止めした。
背縫いや裾線が曲がって見えるのはお針当番が雑に縫ったせいも
あるけれど、仕上げアイロンをかけてもかけても、しばらくすると
絞りの凹凸が戻ってきてこんな風にふにょふにょと歪んでしまうのだ。


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細長い余り布の周囲をまつって、兵児帯風の帯も拵えた。
幅2.5mmの三つ折にしてちまちまとまつる作業が辛かった…
長辺の片方は既に縫ってある縁を利用したけれど、残りの三辺を
全てまつるのに要した時間は一週間(遅すぎである)。
他にも余り布が出たので、今もう一本兵児帯を拵えているところ。
タイニー・ベッツィの浴衣用にでもしよう。振袖用の帯揚げなんかも縫った。

ところで上の画像、上前の膝あたりに写っている白っぽい斑点は
なんなのかというと…


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布を全部裁断してしまって、背縫いと袵縫いまでしちゃった時点で
一番目立つ上前にぽつぽつと虫穴があるのに気付いてしまったのだ。
よりによってこんなところに~。もう身頃を裁ちなおせるほどの布地はない。
仕方がない、どうにかしてボロ隠しを…と考えて、なぜか薔薇の刺繍。
下手くそだなあこの刺繍。穴は4つほどジグザグに並んでいたが
刺繍はバランスを考えて6つにした(しかしちっともバランスがとれてない)

なんでピンクの段染め刺繍糸なんか使ったかなあ私。
真っ赤な薔薇にすれば遠目には目立たなくてよかったかも。
後悔先に立たず。

ところでこの後、バリオンローズステッチの出来の悪さに
「きれいな薔薇をマスターしたい!」という気持ちがムラムラと起こり
金曜日に「A to Z バリオンステッチ」という前から買いたかった本を
買ってきてしまった。バリオンローズステッチ、好きなんだよね。
上手に刺せるようになったらドール用の薔薇刺繍帯でも作ろう。


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さて、完成したので着せるのだ。すず子さん、こちらにおいでなさい。
これを着て可愛い金魚娘になりましょうねえ。

「室生犀星の『蜜のあはれ』みたいな?」

そう、それそれ!


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着 せ た…ぐはっ。金魚だ金魚。
か わ い い(←親莫迦)。

色々と難のある布地、難のある縫製のボロ着物(襦袢)でも
それなりに着こなしてくれる有能モデルすず子さんに感謝。
すずさん、やっぱり赤が似合うなあ。赤いおべべに黒髪が映える。

振袖にしたのも、着丈が長いのを端折らずに着せているのも
兵児帯風のを大きく蝶結びにしてあるのも、全て金魚っぽくするため。
写真ではよくわからないけれど、この布地は古びて薄くなっているのを
ひとえ仕立てにしてあるせいで、腕なんかがうっすら透けるのですよ。
えろすぎて、着せつけながら何度か気絶しかけたお針当番であります。

胸の薄い、幼児体型のすず子さんでコレなのだから、胸の豊かな、
太ももむっちりのお姐さんに襟ゆったりめで着せ付けた日には
お針当番、本格的にあの世に行ってしまうかもしれない。

(大丈夫、お針当番のところにはそんな体のドールはいないから)

…じゃ、じゃあすず子さん、これに入ってみようか。

「…金魚鉢?」


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うわあ、金魚だ金魚(画面には一部分しか映っていないけれど、
丸くて、ヘリのところが波打ってて青色になってる昔風の金魚鉢。
金魚鉢単体で写真撮るの、忘れてしまった。可愛いんだけど)。

ねえねえ、「あのね、おじさま」って言ってみて言ってみて。

(註:コケティッシュな金魚の少女と七十歳の作家との会話体小説
『蜜のあはれ』で、金魚が飼い主の作家に「おじさま」と呼びかけている)

「あのね、おじさま」

なあになあに?


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「あのね。この金魚鉢、ちょっと狭いわ」

ああ…ごめん、もう一回り大きいのにすればよかったね。
どういう座り方しても足がつかえたり頭が出ちゃったりするもんね。

「そうよ。これじゃ金魚鉢っていうより茶碗風呂だわ」

ゲゲゲの鬼太郎ですか。妙なものを引き合いに出すね。

「だって、人語を喋る金魚娘って妖怪の一種じゃなくって?」

確かに『蜜のあはれ』の金魚嬢は、やたらと美人の幽霊と出会って
「田村のおばさま」って呼んで親しくお話なんかしちゃってるけどね。
作家の「おじさま」のお腹の上で遊んでいたかと思うと、
ハンドバッグなんか持って丸ビルの歯医者に通ったりもする
キュートでハイカラな金魚さんなんだよ。

「あたいも丸ビルって行ってみたいわ」

あたいって、『蜜のあはれ』風になってきたね。
その格好のままじゃ連れて行けないよ。
破廉恥すぎるってんで逮捕されちゃうから(当番が)。

「じゃあ丸ビルに行けるようなモダーンなよそゆきがほしいわ、おじさま」

アゾンで買った赤いレトロ調のミニワンピースがあるだろう。
あれに赤いストラップシューズを履いて、ハンドバッグを持てばいい。

「ふーん。…ところでね、おじさま。」

(私もすっかり「おじさま」になったな)
何かな?(…と、ついカメラを持ったまま顔を近づける)


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「ここに入ってるのも飽きたわ。出して頂戴」

(後編へ続く)
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by ura_hoshimi | 2006-10-14 22:18 | お針当番記す