某所で新月予報を出している「星見当番」の裏日記。裏当番&裏テントチームが執筆を担当


by ura_hoshimi

いやはや。

【裏当番記す】

今月の頭に忌野清志郎が58歳で死んで、
先週は頼近美津子が53歳で死んだ。

50代の、まだまだ年老いたという年齢じゃない人たちが
続けて亡くなるなあと思っていたら、今度は栗本薫が56歳で死んだ。
彼女もまた、先の二人同様に癌を患っていた。

裏当番は清志郎のことをあまりよく知らないし、
頼近美津子にいたっては、「森茉莉の『ドッキリチャンネル』の中で
森茉莉から“頼近美人”の名前で呼ばれていたあの人か」程度の知識しかない。
過去の生活の中に「あの頃清志郎の歌を聴いていたな」とか、
「あの頃テレビで頼近さんが喋っているのを観たな」という記憶がない。
だから、死んだときいても「えっ、その年齢で(えっ、癌で)」くらいにしか思わない。
その人の死と一緒に、何か自分の大事な思い出も一緒になくなったような
気分にはならない。

でも栗本薫はちがう。
栗本薫は、裏当番の高校時代の思い出と、その中でも
高校で出会った二人の親友の思い出の中に深く根付いている。

その頃の当番は、親友ふたりと、あと数人のクラスメイトとの間で、
節操のないブッククラブもどきをしていた。互いに互いの趣味に染めようと
隙あらば雨アラレと本を貸しつけ、また大量に本を借り受ける。

友人たちと裏当番の間を飛び交う本の弾幕の中に栗本薫があった。
親友のひとり(今はこいつももうこの世にいない)がグイン・サーガ好きで
新刊が出るたびにグループに回してくれた。彼女は栗本薫のほかに新井素子と
ナルニア国物語とアシモフの『黒後家蜘蛛の会』と田中芳樹が好きだった。
裏当番はミヒャエル・エンデと橋本治と森茉莉と稲垣足穂が好きだった。
レイ・ブラッドベリと筒井康隆は二人とも好きだった。

裏当番がグイン・サーガの行方を追うのに挫折した後も
(たしかマリウスがオクタヴィアと結婚する辺りまで読んだと記憶)、
友人は新刊が出るたびに買って読んでいた。
ときどき、「いまグインどうなってる?」と訊いたりしていた。

まさかグイン完結を見ずに親友が逝くとは思ってなかった。
もうヤツが死んで丸五年経ってしまった。

まさかグインを完結させずに栗本薫が死ぬとも思ってなかった。
完結篇が出たら、親友の思い出のために残りの巻を読んで
(裏当番が挫折したのがかなり前だということを考えると
それは結構大変な作業になる気がするのだが)
ヤツの墓前に報告しようかとちらっと思ったこともあったのに。

グイン好きの親友が死んでしばらくしてから、
もう一人の親友と大喧嘩をして疎遠になった。
三年くらい前に謝罪されて、和解の真似事をしたけれど、
前のように親しく会う仲には戻れていない。ごくたまに、
向こうから来るメールに返信するくらい(私は、まだ怒っている)。

今日は、その疎遠になってしまった高校時代の親友から
一年ぶりくらいにメールが来た。話題は栗本薫の死のこと。
たぶん、彼女も高校の頃を思い出したんだろう。

友人知人の中でも一、ニを争う筆不精のヤツが
疎遠になった、しかもまだしつこく怒っているらしい旧友相手に
思わずメールをせずにいられなかった、それくらい衝撃だったんだ。
そして、裏当番自身も、そのメールには返事をせずには
いられなかった。私とヤツと、今はこの世にいないもうひとりのヤツと
三人で山ほど読んだからな、栗本薫。

なんだか、青春時代の名残りまで一緒に消えたみたいだと
旧友は書いて寄越したものである。裏当番自身は、
栗本薫にそこまでの思い入れは既にないけれど。
でも、高校時代は遠くなったなあと思う。
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by ura_hoshimi | 2009-05-27 23:16 | 裏当番記す